代表取締役社長
熊沢 豊さま
〇symphony とのつながり
「景気がよいときも、そうでないときも気軽に話せる仲ですね。なんていうんでしょう。気構えなくいられる。彼と知り合ってよかったですね」と微笑みながら新井税理士との関係を語ってくださった。「新井先生とは地元の金融機関との会合で知り合いました。仕事関係なく、食事を楽しみあう仲だったのですが、会社の数字を少し見てくれないかと相談をし、それから symphony さんにお願いをしています」。
「会社の数字について、当社の経理スタッフと symphony のスタッフさんがピチッとやってくれています。心強いですね」と語る。「当社は父が営んでいた会社と、私が営んでいた会社を合併。事業承継でも相談をさせていただきました。就任式のようなイベントはできないのかと新井先生に相談したところ、これまた話に乗っていただけました。私の就任式も symphony のみなさんにお任せです」。「そんなこともお願いできる関係ですから、たまに正直に文句を言ったりもするんですよ。新井先生がどうお感じになっているかはわからないですけどね」とユーモアを挟んでくださった。「父が代表を務めていたときは、他の先生にお願いをしていたんですけどね。意見を述べ合える関係の方がよいだろうと父が判断してくれて、それからのお付き合いですね。有難いです」と手元を見つめた。
〇熊沢印刷工芸 – 職人感性を大切にする
「当社はスクリーン印刷に特化をしてきました。このスクリーン印刷と、バス・タクシー、電車などの交通機関にラッピングをするシール部門で事業を構えています」。「スクリーン印刷って、すごいんですよ。水、空気以外であれば印刷ができてしまう技術なんです。日常生活でもみなさん目にしているんですよ。たとえば、テレビのリモコンのゴムに印刷された数字とか、パソコンのキーボードの文字記号ですね。あれらがスクリーン印刷です」とうれしそうに語る。「なかでも当社は出版業界に焦点を定めてスタッフ一丸で取り組んでいます」。
「当社は創立57年を迎えました。創業をした父は、もともと絵描きになるつもりで修業をしていたのですね。ただ、なかなか厳しい環境だったようで修行先の先生からスクリーン印刷の会社を紹介されたのです。そこで父はスクリーン印刷に情熱を注ぐようになり、いまに至っています」と振り返る。「もともとはポスターやスーパーの商品棚にある印刷物(POP)の印刷を受注。そのうちディスプレイを受け持つ会社さんとお付き合いができ、百貨店の催し物の印刷も担当させていただくことになりました。もちろん得意分野のスクリーン印刷です。また、プラスチックやガラスの印刷についてもノウハウを蓄積していきました。そして、看板・サインのスクリーン印刷へとサービスを広げていくことになりました。ただ、ね。ひとつ勉強もしました。そのころの看板業界は一般的に、お客さまからの変更につぐ変更にも対応する雰囲気がありました。もちろん一定の相互確認はしているのですが、サンプルなどで実物を目の当たりにするとお客さまも気持ちがかわってしまう瞬間があるんですよね。もちろんよくわかるのですが、会社経営としては働けども、売り上げは上がれども、なぜか利益がでない。そんな状況にも陥りがちでした。そこで、20年から25年ほど前から出版業界の印刷に参入をすることになりました」。
「繰り返しになりますが、当社はスクリーン印刷に情熱を注いでいます。ですので、たとえば本や雑誌の印刷も表紙のみを担当させていただくなど技術力が生かせる分野でお手伝いをしています」。「出版不況と言われます。逆に言うと、一冊一冊、読者の関心を引く試みは洗練されていっています。ここで当社はスクリーン印刷の技術力でみなさんのお手伝いをさせていただいている。そのような次第です。スクリーン印刷は表紙のタイトルに厚めにインクを載せて、立体的に手触りがあるようプリントをできたりするのです。聞くと簡単そうですが、コンピュータ管理ができない部分。ここにおいて当社のスタッフが感性を発揮するところになっています」と社員の作業現場を見ながら語る熊沢社長。
「もうひとつの事業、ラッピング(シール事業部)についても今後が楽しみです。そもそもは交通機関のラッピングが主だったのですが、最近は個人で車のラッピングを依頼される方もいらっしゃいます。印刷から施工(現場)まで一貫して提供できる会社はそう多くなく、このワンラインで出来るというのも当社の強み」。「また、東京2020に向けてインバウンドバスのラッピングの需要があります。当社の社員だけでは手が足りない状況。そこで交通広告の規制が日本よりも解放されている台湾へ訪問。現地のプロフェッショナルと対話を重ね、50名の協力をいただける関係づくりができました。台湾のみなさんと、当社のスタッフが合わさることで生み出されるものも楽しみです。また、当社のスタッフの感性にも影響があればうれしいなと思います」と声を弾ませる。
「当社では “職人感性” という言葉を掲げています。IT化は加速する一方です。そのなかで大事なことは、こだわる意識、だと思うのです。有難いことに当社では近年、採用に関して美大卒業の人材も応募をしてくれるようになりました。応募者にスクリーン印刷について感想を聞いていてみると、”アナログなところがよい”と言ってくれるんですね。そうはいっても、スクリーン印刷の現場は、制作環境そのものの手間暇もあるけれど薬剤をつかったりもするよ、と私が問いかけると “それがやりたいんです”とまで言ってくれるんです。こだわりを持ちサービスを手掛けることは、ますます世の中でも価値を増しているのではないでしょうか」とうれしそうに語る。
「こんなこともありました。一昨年前に当社で “付加価値展”という当社の作品展覧会を行ったのです。もともとは私が独自にやりたい!と声上げていて、先に会場(北とぴあ)を押さえちゃったんですね。そして社内で “さあ展覧会まで10か月。プロジェクトを走らすぞ”ってね」といたずらっぽく笑う。「社内は大騒動にもなりましたが(笑)、社員がまとまりましたね。また、展覧会にはお客さまもご招待しまして、こんなことできますよというPRをさせていただきました。お客さま側でも発見があったようで、走らせてよかったプロジェクトでしたね」と熊沢社長。
〇今後の展望
「ふたつあります。会社の事業のこと、そして社員たちのことです。お客さまのニーズは多様化していく一方です。それらニーズをつかむためにも数ある印刷方法のどこかで、ワンライン(全ライン)のサービスを提供できるようになりたい。広く印刷をみますとまだまだ出来ることは多い。デジタル印刷(インクジェット)もありますし、箔押しなど後加工でも手を付けられると思っています。そのためには、営業と現場がタイムリーにコミュニケ―ションがとれるようになることが大切。事業所の拡張も視野にいれなければならないでしょう。そう、やはりまだまだ出来ることは多いです」と微笑む。
「また、社員たちのことを。社員たちには技術的なことと、精神的なことも含め支え共に成長していきたい。技術的な取り組みについては仕組みづくりが進行中。精神的なことについては、変化多き時代だから大切なこの問いかけ – なんのために働いているのか – この問いを大切に育んでいきたい。社員と会社は共存共栄です。身をもって体験しながら理解を深めていければと考えています」。